「米沢の推しがあると、
移住先での幸福度が上がると思うんです」
米沢育ちの移住相談担当。
Yamaki
Ririka
山木 里莉花 さん
山形県 米沢市出身
ー編集長(地域振興課課長):今回は「暮らしのーと」の番外編として、米沢市役所の移住相談チームのメンバーを紹介したいと思います。移住相談をする方にとっても、「行政」という顔の見えない存在とのやり取りでは、どうしても距離を感じてしまうこともあるかもしれません。だからこそ、担当者の顔が見え、「この人になら人生相談をしてみたいな」と思っていただけるような関係を築いていきたいと考えています。今回は、山木さんに、米沢での暮らしや移住相談担当としての意気込みを伺いました。
[自己紹介] 山木 里莉花
山形県米沢市出身。米沢生まれ、米沢育ち。米沢女子短期大学の国語国文学科を卒業。移住の不安を解消する移住相談窓口や、移住支援の受付、移住者向けの交流イベントを企画する移住コーディネーター。プライベートでは、舞台俳優やアイドルの「推し活」に生き、そのためには遠征にいくことも。
「自分の視点で、米沢の好きを見つける」これは推しの好きなところを見つける感覚と近いかもしれないですね。
ーいきなりプライベートの話になってしまうのですが、山木さんが好きな舞台俳優やアニメキャラクターについて語る時のキラキラした表情って、生き生きしていていいですよね。
―山木:ありがとうございます。私には、昔から舞台俳優やアニメキャラの「推し」がいます。握手会やライブ、舞台やミュージカルなどに行ったり、推しのグッズを購入したり、うちわやペンライト、その他にもハンドメイドをしたりして、そのときに好きなものを応援することが、とにかく生きてて楽しいんです!
― 以前、山木さんに米沢市内をご案内いただいたとき、「ここが私のお気に入りの田んぼです!ここから観る、一面に広がる水の張った田んぼに夕日が映った景色が、とても綺麗なんですよ!」と教えていただいたのを覚えています。そのとき、日々の暮らしの中で「この景色が好き」「この時間が好き」といった感覚を大切にされているのがとても印象的でした。
ー「誰も気づいていない推しの魅力を見つけて嬉しくなり、誰かに伝えたい」という気持ちは、米沢の魅力を発見し、それを共有したいという気持ちと通じるものがあるのかもしれませんね。
ーしかも自分が育った地元というのは、見慣れているがゆえに、その魅力に気づきにくいものだと思います。
―山木:確かにそうですね。私も移住に関わる仕事をするようになってから、米沢の魅力を意識的に見つけたいと思う自分がいることに気づきました。例えば、冬の朝独特のキンと冷えた、澄んだ空気を肺いっぱい吸い込む感覚、夏の夜空に浮かぶ今にも落ちてきそうな満点の星を見上げたとき、母と夕方に近所のスーパーに行くといつも元気に声をかけてくれる鮮魚売り場のおばちゃん、採れたてのみずみずしい野菜が沢山入って1つ100円で売っている無人販売、仲良くなった人たちと寒空の中大笑いをしながらするバーベキュー、どの瞬間も、観光パンフレットに載るようなものではありませんが、私にとってすごく大切で、大好きなんです。
米沢で育ち25年。大変な事もあるけれど「やっぱり、米沢が好きだ」と思う瞬間があるから、ここで暮らしたい。
ー自分が住むまちの「推し」を見つけられる感覚は、移住先で暮らす上でも大切な感覚かもしれませんね。
―山木:私もそう思います。観光のように良い面だけを楽しむのとは違い、「暮らす」ということは、その街の魅力も大変な面もすべてを受け入れて共に生きることだと感じます。私自身、小学生の頃は吹雪の中でスキー板一式を担いで30分かけて通学したり、中高時代には真冬の大雪の中の登校で、スカートの下に履く黒タイツが吹雪で凍ったり、屋根に上って雪かきをしたりと、米沢での暮らしの大変さを実感することも多々ありました。また、地元ならではの知り合いが多いがゆえの窮屈さを感じることもあります。
だけど、どの街で生きていても大変なことは少なからずあるものなので、結局は「自分がいるこの環境を好きになれるか」だと思うんです。日常のある一瞬でも、「この時間が好きだな」「この景色が好きだな」が見つけられると、米沢の暮らしは楽しいと思いますし、私の「米沢の推し」も移住される方にぜひ伝えたいです。
移住のお悩みや心配事は、わたしにご相談ください!
― 市役所の移住担当としての役割は「相談者のお悩みや不安を解消する」ことが基本ですが、そのうえで、「担当者の視点から一歩踏み込んだ心遣い」を加えたコミュニケーションが生まれると、より安心感やここで暮らすことへの前向きさに繋がると思うんですよね。
―課長:はい、そう思います。相談される方の質問にお答えしたり、支援の受付や不安解消に努めることは基本ですが、それに加えて、職員自身が想像力を働かせて「この状況なら、こういった情報も役立つかもしれない」と考えながら、一生懸命対応している様子を見ると、とても頼もしく感じます。
―山木:移住相談は暮らし全般に関わるため、市役所内外の部署や組織と連携しながら、相談者の不安を少しでも軽減し、米沢での生活に楽しみを見出していただけるようなコミュニケーションを大切にしています。
私自身、市役所の窓口は「支援の申請」や「問い合わせ」が主な目的で訪れる場所という印象が強いですし、目的が達成されるとそれ以上の会話が生まれにくい場所だと思います。ですが、お急ぎでない方には、移住された背景や、やってみたい暮らしをお伺いした上で、お力になれそうな情報をご紹介できるように心がけています。
実際に「マルシェに出店してみたいけれどどうしたらいいかと思っていたんです!」「アニメグッズが買える場所を教えてもらってよかったです!」など、窓口での会話が、その方の米沢での生活を少しでも楽しくできるようお力になれた瞬間はとても嬉しいです。
―山木:また、私は年に数回ほど、移住者交流会を企画しています。「銀世界でスノーモービル」「里山で朝ごはん」「どろんこ田植え体験」などテーマが毎回異なるのですが、どのテーマも私自身が感じている「米沢の魅力」を移住された方々と共有したい!という思いから考えています。これからも「米沢の好き」を移住された方々と共有し合えたら嬉しいですし、移住者の皆さんが新たに見つけた米沢の魅力を教えていただければと思っています。一緒に米沢での暮らしを楽しみながら、互いに新しい発見を重ねていけたら嬉しいですね。
― これからの目標は?
― 山木:米沢に住み始める方が最初に接する窓口担当として、安心感を抱いていただける存在でありたいと思っています。米沢で生まれ育った立場から、少しでもお力になれたり、私との会話をきっかけに「米沢の人とも勇気を出して話してみようかな」と思っていただけるような関係を築いていきたいです。
現在悩んでいるのが「行政の責任の範囲ではお答えできないご相談」にどう向き合うかという点です。例えば、「米沢の家賃相場」や「雪下ろし業者の費用」などを尋ねられることがありますが、これらは時期や業者、その方の状況によっても異なるため、一概に答えることが難しく、責任を持ってお答えできない場合があります。それでも、「私の担当ではないので答えられません」と突き放してしまうのでは相談者の解決には繋がらないため、いつも歯痒い思いをしています。
そこで、0か100で答えるのではなく、「あくまで私の経験を踏まえた話ですが〜」と前置きした上でお伝えしたり、「この分野であればこちらの機関にご相談いただくと良いですよ」といった形で、できる限り寄り添える対応を心がけています。これからも移住する方に対して安心感をお届けできるよう励みたいです!
— 編集後記(2024年_冬更新) ―
ー取材時から1年が経ちましたね。この1年間、振り返っていかがでしたか?
山木:この1年は、これまでの「行政として責任を持てること以外は発言してはいけない」というルールを超えて、移住者の不安に寄り添う「移住相談窓口の在り方」の可能性を広げることに挑戦した年でした。この仕事に就いて今年で2年目ですが、1年目は「移住相談を受けるということが、相談者の人生にとってどんな意味を持つのか?」「移住相談担当としてどうしたらお力になれるのか」を考え続けていました。
その結果、これまでの「それは当部署の管轄ではないので分かりかねます。」という対応に違和感を覚えるようになりました。そこで、誤解を与えないよう配慮しつつ、「私の個人的な経験ですが〜」と前置きしながら案内をしたり、住まい、子育て環境、仕事や就農など、他の部署・機関との連携に挑戦してきました。
「このやり方が行政の移住相談担当として正しいのか?」と不安で悩む日々ではありましたが、相談者の方から「不安が大きかったのだけど、相談できて良かった」「親身に対応してもらえて助かった」と言われた時には、「この方向で進めてよかった」「間違っていなかった」と感じ、とても勇気をいただいています。
―編集長(地域振興課 課長)より―
編集長:私たちの存在意義は「支援メニューの案内」という狭義の役割に留まらず、広義には「移住された方が安心して楽しく暮らせるようサポートする」ことであると捉えています。そのため、行政手続がスムーズに行えるよう申請方法をお伝えするだけでなく、他部署の担当分野であっても、お困りごとの解決や支援に該当する可能性がある場合には関係する部署におつなぎすることが重要だと思います。その点で、山木さんが立場的に悩みながら、行政側のハブ的な存在となる「移住相談窓口の在り方」を模索し続けている姿勢は、とても誇らしいです。
行政は専門性のある組織なので、どうしても部署ごとの縦割りの対応になりがちで、全てが横断的に連携できている訳ではありません。しかし、移住された方が住んだ後に安心して楽しく暮らしていただくためには、住まい、子育て環境、仕事や就農など、市役所内外の関係部署と連携をしなければ、ご相談いただく方にとって必要な情報が伝わりません。市役所を挙げて移住者をお迎えする。そんなホスピタリティある市役所を目指して、市役所内でも連携し、そして、山木さんには重要なつなぎ役として、これからも頑張っていってほしいです。
暮らしのーとは、米沢のいろんな暮らしを集めています。あなたの叶えたい暮らし、理想の米沢ライフについて、ぜひ米沢市の移住相談窓口まで教えてください!もしかすると、直接もっと深い話を聞いたり、新たな出会いにつながるかも。